資産が2倍になるまでの時間をざっくり出すための法則で、72 ÷ 金利(%) ≒ 年数 という便利な近似式ですね。たとえば年利6%なら、72 ÷ 6 = 12年。シンプルで覚えやすい。
でも…ふと思ったんです。
「じゃあ、3倍になるまでの時間って、どうやって出すの?」
そんな素朴な疑問から始まったのが、今回のテーマです。
2倍じゃなくて3倍。
これ、意外と知られてないけど、実は「115の法則」があるんです。
今回はこの“資産3倍の法則”を、ちゃんと式から導いてみようと思います。
資産が3倍になるまでの計算式って?
まずは、計算の土台となる「複利の公式」から見ていきましょう。
資産が年利 r(小数)で運用されて、n 年で3倍になるとしましょう。すると、こんな式が立ちます
この式、複利では基本中の基本です。
自然対数を使って式を変形していく
この指数部分を解くために、両辺に自然対数(ln)を取ります。
対数の性質を使って変形すると:
ここまでは、高校数学の範囲ですね。
ln(1+r)の処理方法|小さいrなら近似できる
ここで問題になるのが分母の「ln(1 + r)」です。
これは年利rが小さい場合(1〜10%くらい)には、こんなふうに近似できます:
この近似は、テイラー展開という数学的手法から来ています:
rが十分小さければ、2項目以降はほとんど無視できるので
ということは…n ≒ ln(3) ÷ r!
この近似を
に代入すると
ここで、ln(3) ≒ 1.0986 という定数を使えば…
これが、資産が3倍になるまでの年数を求める近似式になります!
年利別に計算してみよう
たとえばこんな感じで使えます:
年利(%) | r(小数) | 年数(n ≒ 1.0986 / r) |
---|---|---|
1% | 0.01 | 約109.9年 |
3% | 0.03 | 約36.6年 |
5% | 0.05 | 約22.0年 |
10% | 0.10 | 約11.0年 |
けっこうリアルな数字が出ますよね。「72の法則」よりも少し長くなる感じが、体感にも合います。
「115の法則」はここから来ている!
ちなみに、投資の世界には「115の法則」という表現もあります。
これは、
という近似から来てるんです。
つまり、
- ln(3) ≒ 1.0986
- 小数でのrを「%表示」に変換するために×100
- → 1.0986 × 100 ≒ 110〜115
という便宜的な丸めによって、「資産が3倍になるまで ≒ 115 ÷ 金利(%)」という言い方が定着したんですね。
まとめ|ただの暗記じゃなく、意味を理解しよう
今回の内容をふりかえると、こうなります:
- 複利の式 (1 + r)^n = 3 を自然対数で変形すると n = ln(3) ÷ ln(1 + r)
- 小さいrなら ln(1 + r) ≒ r
- だから n ≒ ln(3) ÷ r ≒ 1.0986 ÷ r
- これを%表記に直すと、「115の法則」になる
つまり、「115の法則」っていうのは、数学的な近似から導かれる経験則なんですね。
表面的に「115 ÷ 金利」って覚えるだけでもいいんですが、その背景を知っておくと、資産運用の数字にも自信が持てるようになりますよ。
あと、誰かにその法則がなぜ成り立つか聞かれた時に、自信を持って答えられます。
